オルソケラトロジーサービスと近視抑制
オルソケラトロジーサービスについて | オルソケラトロジーの近視抑制効果について | 低濃度アトロピン点眼による近視抑制 |
オルソケラトロジーサービスについて
当院ではオルソケラトロジーによる近視の屈折矯正サービスを行っております。
オルソケラトロジーとは、夜間寝ている間に特殊なハードコンタクトレンズを装用することで角膜の扁平化を図り、起床時にレンズをはずして日中は裸眼で過ごすための屈折矯正術です。中程度の近視までに適応があり、利用期間中は定期的な眼科診察が必要です。
通常のコンタクトレンズと違い、起きている間は裸眼でいることができる点にメリットがあります。
厚生労働省のガイドラインでは20歳以上が適応とされておりますが、近年では近視の抑制効果を期待して小児への適応も検討されております。
オルソケラトロジーサービスをご利用いただくには、まず適応検査を受けていただく必要があり、オルソケラトロジーにより屈折矯正効果が十分に得られるかどうかを確認致します。その後、テストレンズを装用いただき、その結果に基づいて患者さまに合ったレンズを作成致します。装用開始から1週間程度で効果を感じるようになり、通常1ヶ月が経過した頃から矯正効果も安定してきます。
オルソケラトロジーのレンズは夜間に装用したままとなるため、日々のレンズケアは非常に大切になります。3ヶ月ごとの定期検診を受けていただき、その際にケア用品とレンズケースを新しく更新していただく必要があります。
はじめに
当院では、オルソケラトロジーサービスをご提供しております。オルソケラトロジーというのは、角膜屈折矯正治療のひとつで、特殊な形状のハードコンタクトレンズ(「リバースジオメトリーレンズ」と呼びます)を夜間寝ている間に装用し、起床時にははずし、日中は裸眼でお過ごしいただく近視矯正治療の方法になります。眼鏡やコンタクトレンズと異なり、裸眼で日中快適に過ごすことができるというのが、この治療のメリットです。
レンズについて
国内では、数社が厚生労働省の認可を得たレンズを販売しており、当院では実績のあるアルファコーポレーション社製の「オルソK」というレンズを採用し、日本コンタクトレンズ学会の講習を修了した眼科専門医が処方と継続的な管理を行います。
処方まで
処方の流れは、まず適応検査をお受けいただき、オルソケラトロジーによる近視治療に適した眼であることを確認致します。適応眼の条件としては、
① 最大マイナス5.0D程度までの近視であること
② 角膜の乱視がマイナス1.5D程度までであること
③ 眼疾患がないこと
等があります。眼科精密検査にて問題がないことを確認後に、処方・治療開始となります。
治療の効果
就眠中に装用したリバースジオメトリーレンズは、夜間の間に角膜表面を圧迫・平坦化します。
平坦化する効果が表れるのは数日から1週間で、実際に裸眼での視力アップを自覚されると思います。
安定した視力に達するのは1か月から数か月を要し、その間にも裸眼での快適な生活をご体験いただけます。
治療の開始後
治療開始後は、夜間寝る前のレンズ装着を行っていただきます。レンズの装着前と翌朝の装用後にレンズのケアを行い、日中の間はレンズを保存液の中に保存していただきます。治療開始後に視力が安定してからは、3ヶ月ごとの定期検診を受けていただきます。
3ヶ月目の診察時に次回3ヶ月分のケアセットと新しいレンズケースをお渡しします。また、3ヶ月間使用したレンズケースは交換して廃棄致します。ご心配な方は、毎月定期検診を受けていただくことができます。それ以外にも何か治療に関しまして不調がございましたら、お気軽に受診下さい。当院は、土日・祝日も診療を行っております。
費用について
最初の適応検査の検査料として、3,000円(税別)がかかります。レンズを処方する際に、レンズ代として片眼5万円(税別)、両眼で10万円(税別)の費用がかかります。また、定期検診代として毎月3,000円(税別)をお支払いただきます。
3ヶ月目の定期検診の時に、次回3ヶ月分のケアキットと新しいレンズケースをお渡します。ケアキットとレンズケースの費用は月々の定期検診代に含まれているため、別途費用のお支払はありません。
レンズの寿命について
リバースジオメトリーレンズは通常のハードコンタクトと同様の素材でできており、丁寧にお使いいただけない場合、破損する危険があります。破損・紛失時に再購入していただく場合、レンズ代として30,000円(税別)の費用がかかります。レンズの寿命はお手入れの仕方にもよりますが、通常2年程度で、2年経過した段階で問題なく使用できる状態でしたら、引き続きお使いいただくことができます。
レンズを交換する必要があり、再度購入される場合は破損等の場合に準じて、1枚当たり30,000円(税別)の費用がかかります。
治療で気を付けて頂きたいこと
コンタクトレンズ全般に言えることですが、正しい使い方を心がけていただくことが重要です。レンズのケアの状態が悪いと、眼の感染症の原因になることがあります。また、レンズと眼の表面の関係は日々変化しておりますので、眼の異常を感じる際は早めに当院を受診下さい。
オルソケラトロジーの近視抑制効果について
オルソケラトロジーには近視矯正の治療の他に近視抑制の効果が期待されています。
近視が進む原因の一つに、本を近づきすぎて読むなど、近見作業による機序が考えられており、これは調節ラグによるものとされています。調節ラグというのは、手元を見ているときに、網膜への焦点が網膜の中心に結像する必要があるにもかかわらず、実際には焦点が網膜中心のわずかに後ろに結んでいるというズレのことで、そのズレを解消するべく眼軸(角膜頂点から網膜中心までの距離)が延長すると考えられています。
さらに調節ラグは網膜中心の結像のみでなく、網膜中心の周囲でも生じることがわかっており、周辺網膜の調節ラグによっても眼軸延長が起こると考えられています。通常の眼鏡やコンタクトレンズによる矯正とは異なり、オルソケラトロジーにはこの周辺網膜の調節ラグを減じる矯正効果があり、そのことがオルソケラトロジーによる近視抑制のメカニズムです。
オルソケラトロジーの近視抑制効果を検証するための臨床研究が国内でも行われており、その結果が注目されています。
低濃度アトロピン点眼による近視抑制
当院では0.01%アトロピン点眼による近視抑制治療を行っております。
眼軸が延長することによる近視の進行は主に学童期に見られ、極度に近視が進行する場合、将来的には病的な近視に至り血管新生黄斑症等により失明するという方もおられます。
若年時の近視の程度から病的近視に至るか否かを予測することは現時点では困難ですが、学童期において同年代の中でも特別に近視の程度の進んだ方には、低濃度アトロピン点眼による近視抑制をお勧めしています。
また、近視抑制の研究は主に学童を対象に行われてきていることから、病的近視になるような成人の近視の抑制については過去に根拠となるような研究結果は示されていないのですが、失明予防の観点から、近視が極端に強い成人の方にも低濃度アトロピン点眼による近視抑制をお勧めしています。
ATOM-Jについて
アトロピン点眼が近視の進行を抑制することは以前から報告されており、Cochrane LibraryのSystematic review*でも唯一有効性があることが示されています。アトロピン点眼による近視抑制効果は当初1%のものが用いられていましたが、1%アトロピン点眼には散瞳と調節麻痺が長時間持続するという副作用があるため、現実的には日々点眼することは困難でした。
近年の研究では1%アトロピン点眼を100倍に希釈した0.01%アトロピン点眼にも1%アトロピン点眼に匹敵する近視抑制効果があることが示され、日本国内においても0.01%アトロピン点眼による近視抑制効果を検証する臨床研究(ATOM-J: 近視学童における0.01%アトロピン点眼剤の近視抑制効果に関する研究)が京都府立医科大学を中心とした複数の大学のグループによって開始されています。
*Cochrane Libraryについて:Cochrane Libraryとは、世界中で行われた信頼のおける臨床試験を収集し、レビュー(メタアナリシス)を行い、個別の疾患に対する診断や治療の効果を判定した結果を集めたもの
費用について
当院の低濃度アトロピン点眼による近視抑制治療は自由診療になります。
3か月毎に定期健診を受けていただき、その際に3か月分の0.01%アトロピン点眼薬をお渡致します。
定期健診にかかる費用は0.01%アトロピン点眼薬の費用も含めて3か月ごとに4,000円(税別)をいただいております。